「今日はナビゲーション次第で2時間の差がつくでしょう」と朝のブリーフィングで聞いたナビの菅原は、地図上からGPSポイントを拾い出す独自の手法も取り込んだ。そのかいあってか、トップをゆく長谷見昌弘選手のテラノに何度かお目にかかれて嬉しい私。もっと一緒にいたいのに、アッという間に小さくなる後ろ姿。その抜き方にも感激する私であった。
この日私はモンゴルをひとりじめした。丘のような緑の山々の頂上を、アップダウンしながらつながるこの1本の細いピストは、景色もスリルも抜群だった。不思議なことに左半分は茶色の大地、右半分は緑の大地、自然は誠にユニークだ。両脇に広がる大地を見下ろし、“私のモンゴル”を満喫した。
ゴールを明日に控えた車内は穏やかだった。しかし貯まってきた疲れや甘えやわがままで、衝突するのも容易なことだった。走っている時は口調がきつくなる、なにより自分で自分に驚いた。当然私たちの間柄ではケンカの相手にもならないが、キャンプ地到着後、言い合いにも似た作戦会議&反省会が行われた。いつの間にか甘えていた私。ラリーレイドのドライバーに求められるものは、速く走ることだけではないことがよく判った。もしかしたら速く走ること以上にムズカシイことなのかもしれない。腹にためず明日に持ち越さないよう配慮をしてくれた菅原に精神面のタフさを感じた。それは長年ラリーをやっているためのものなのか、それとも本来タフだからこそラリーを続けていけるのかはわからないが。それから現地の人から1000Tg(日本円100円相当)で30年前のバイクを貸りた私たちは、最後のキャンプ地を楽しんだ。泣いたり笑ったり、そんな忙しい1日であった。