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8月14日

ETAP-1 TOTAL:646.48km
ウランバートル→アルベーヘール→バヤンホンゴル
リエゾン456.64q/SS 170.23q/リエゾン19.61q

初日の悪魔
教訓:初日は自分に負けるな

緑のじゅうたんがおおらかに広がっていた。昨年と変わらず風も大地も穏やかで優しかった。誰でも温かく迎えてくれる。しかしそれは大地と自制心を素直に受け入れられることのできる者にだけだった。


初日は怖ろしい。初日には悪魔がいる。それも自分の中に潜んでいたのだ。悪魔の魔法にかかるのも自分なら、かけるのも自分。興奮と不安とくだらない少しの自信が、自制心を麻痺させてしまうのだ。初日は慣れることに徹するはずだった。なのに他の車を見るとカーッと頭に血が上り、気持ちばかりが先へ先へと行ってしまう。気がつけばつまらない欲や意地に駆られていた。「危ない!落とせ」という菅原の声でハッと我に返る。「車を壊してリタイヤする人は大概スタートして1〜2日目のうち。3日走れる人は最後まで走り切れる」初盤は充分に気をつけろと念を押され、私も重々承知していた。なのになのに初日の魔法に、私もまんまとかかってしまうとは・・・

「早く走れるようになりたければ、たくさん走ることだ。リタイヤしていてはうまくなれない」菅原の言葉が心に響いた。

転倒車も出た魔の初日。ウチのクルマが無事だったのは、隣りでよほど恐い顔をしていただろう菅原が“魔除け”となって守ってくれたのおかげだろうか。師匠である菅原にそんなことは言えないが・・・

初日のキャンプ地で見た月は、いきなり大きな白い満月だった。美しく、怖ろしいその月は「ついてこれるか」と言っていた。モンゴルの月は生きていた。