出場するほとんどの車両が、いわゆるラリー車と呼ばれる中、特筆したい車両がある。
岩井/伊倉選手が乗るパジェロである。
何故かというと、ほとんどド・ノーマル車だったからである。本来であれば出場車両は、車両規則によりFIA(国際自動車連盟)安全基準を満たしたものでなくてはならず、ロールバー、安全タンク、バケットシート等といったものが必要であった。乗員の安全を守る上でその重要性は充分に理解できるが、実際これら全てを揃えるとなると、金銭面において非常に負担が大きくなり、誰もが楽しめるはずのラリーレイドの入り口を狭めてしまう結果になっていた。
そこでそんな悪循環から抜け出そうと、無給油航続距離を今までの半分以下に短縮することにより、安全基準のボーダーラインも引き下げられ、また山田会長の計らいによりテストケースとして、ロールバー、4点式シートベルト、消火器など最低限度の安全装備のみ施され、足りないものは他から借りるなどして補った。
こうして改造費をかけない車両でも充分楽しめるという前例を作ったのである。
ちなみに過去2回二輪で同大会に出場経験を持つ彼らは、少々のハプニングはあったものの、ラリー中盤には四輪部門1位でゴールする日もあったほど、ノーマルといえどもまったく侮れない存在であった。これもラリーレイドの醍醐味でもあろう。
そしてもう一台、四輪部門で優勝をした現地モンゴル人選手のロシアンジープである。
彼らはモンゴル国内のオフロードレースのチャンピオンの名の通りに、驚異的な速さで圧勝した。サスペンション構造は前後ともリーフスプリングのリジットアクスル、タイヤも硬そうなトラックタイヤ、ハンドルは細くて大きな純正ハンドル、もちろんパワステなどついていないバリバリの軍用車であった。それでも彼らは恐ろしく速かった。
もちろん地元であるだけに道も知っていたのだろうが、それにしてもあのジープであれだけ速く走れることに、まったくもって恐れ入った。
ラリー終了後、そのジープを運転させてもらったが、とにかく走れたモノではなく、以前私が乗っていた三菱ジープなどカワイイものだった。もしも私がこのジープでレースに出たならば、クルマが壊れる前に、先に私が壊れるだろう。
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