Etap2 (泥沼での一勝)

朝になると天候は回復し、主催者の本部も到着していた。この日はスタート時間を二時間遅らせた上、ルートを一部変更して競技を続行すると発表された。
二時間遅くなるということは二時間早く日没を迎えることを意味しており、モンゴルを走る上でとても重要な意味をもつ。なにしろモンゴルの夜は月明かり以外何もない。ルートには穴も多く、転落すれば死に直結することにもなりかねない。
そんな中、自分の初めてのナビゲーターとしてのステージが始まった。やはり緊張する。これまでの会長との付き合いの中で勝負にかける執念や一切妥協しない取り組み方などを嫌というほど見てきているため、一瞬の油断もすることは出来ない。
しかし、初めてで緊張している自分をよそに、会長はとてもリラックスしたムードで運転している、レース中にも関わらず世間話が絶えず、気を取られて話に夢中になっていると、ミスを犯す。即座に「何やってるんだ!お前はルートブック持ってるんだから距離が来たら方向指示するだけだろ!」と檄が飛ぶ。やはり真剣そのもの。しかし、しばらくするとまた世間話が始まり、また怒られる。そんな繰り返しをしつつレースはライバルである尾上・石原組のジムニーと競り合いを続けながら、RCPと呼ばれる給油ポイントの直前まで到達していた。
「RCP直前になると尾上さんが勝負をかけて追い越してくる!しっかり後ろをマークしてろよ!」との指示を受けるが、うっかりマークを逃した瞬間、自分の指示ミスが重なり、尾上・石原組に追い越されてしまった…。「しっかりマークしてろって言っただろ!」と怒られ落ち込んだところでRCPへ到着。ここまでで尾上さんに30秒負けたことになる…。
RCPでは給油を受け、一時間の休憩が義務付けられる。ここで簡単な食事や車の整備をするのだが、落ち込んだ精神状態での一時間はとても長い時間に感じられた
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