最終更新日:2008/12/24
 

紅白ナビ合戦

 前日、突然のレストデイ(休息日)をいただき、準備も体調も万全でETAP3の朝を迎えました。

 完璧な晴天。夏ですがモンゴルの朝夕はとても寒いです。トイレはもちろん外。草原ですから、風がすーすーと、青空のもと大自然のトイレは寒かったです。
 この日はループのステージなので、同じビバークに帰ってくるので荷物は必要最低限。各車、雲ひとつない青空の下スタートしていきます。宿敵の赤いジムニーは4台前、ということは仮に尾上さんより早くゴールすれば、約4分を挽回できる計算です。じわじわと差をつめていきたいなと考えながら、いよいよスタート。走り始めてからしばらくは、道がクネクネしていて、また起伏が激しい凸凹道でしたが、スタートから約90kmでハルヌールの湖に到着しました。驚くほど水色をした湖です。

 しかしすぐに湖畔は砂丘地帯になっていきました。慎重に・・・といっても、砂丘の中はすでに前走車がつけた轍が無数にあります。それをコマ図と照らし合わせながらのナビゲーションが始まりました。実はこの轍が罠なのです。
 4輪のトップを行くのは、BAJAで優勝したチャレンジャーに乗る塙さん。マシンも相当速いのですが、コース取りもすごい。GPSポイントに向かってまっすぐに進んでいるのではないかと思うほど、コマ図どおりではない真っ直ぐな轍が付いています。もちろんコマ図無視ですから、コマ図には載っていない大きな穴や、凸凹がたくさん出てきます。この罠に数台がはまり、V字のクラックが入ったところで、フロントを打ち、ラジエータを壊してしまった車両も見受けられました。
 僕は慎重に、コマ図よりも前を見ていました。砂丘地帯は短く、一つ目の砂丘地帯は難なく無事に通過。とりあえずほっとします。が、・・・砂丘を抜けたあたりで、コマ図が合わなくなってしまいました。
 前走車の轍にしたがって走っているので、コマ図どおりの道ではないところを走ってきたためでした。GPSポイントまで10kmほどの地点だったので、GPSポイントへ向かって進むことにします。山をひとつ越えたところで、右の方向にGPSポイントの井戸を発見。本来のルートから1kmほど離れた道を走っていることが分かりましたので、この先、原野をトラバースします。このトラバースがかなり危険。草むらの中を掻き分けて進むので、大きな穴があったり、石が落ちていたりと、油断できません。このような状況では、焦ってしまいがちなのですが、さすがに会長、このような場所はゆっくり慎重に走ります。常に冷静な判断、行動がパリダカを常に完走できる理由なのだと肌で感じました。

 無事にオンコースに復帰し、今回の山場、砂丘まであと少しです。
 砂丘の手前で、タイヤのエア圧を下げます。このエア圧調節はスタックしないためには重要なのですが、調整に時間がかかります。走っている間、差はそれほど付きませんが、止まっている時間は大きな差になります。そのため事前に作戦を立て、エアゲージを2台用意。左右同時に作業することで、作業時間を5分に抑え、先を急ぎます。
 ところが砂丘に入る直前で再びミスコース。コマ図にはCAP245で轍が薄い方向へ進むという表示が出ています。しかし、その方向には轍がありません。目標を見失ったまま、距離だけが増えていきます。
 ミスコースを確信した瞬間! 前方から赤いジムニーとバイク数台がこちらに向かって走ってきます。尾上さんたちもミスコースして、引き返してきたのでした。あわててこちらもUターン。赤いジムニーの前に入ります。ミスコースした場所まで全速で戻ります。
 しかし、いくら探しても轍が見つからないため、やはり全車が躊躇します。我々は賭けで、轍のないところをCAPの方向に走ります。しばらく草むらの中を走ると、轍を発見! 視野が近すぎていました。もっと遠くを見て、目標や轍を発見しなければいけませんでした。
 もとの道からそう遠く離れているわけではありませんが、草むらの中にある轍を見つけるのは非常に難しいなと感じました。一瞬を見逃さない集中力が重要です。
 尾上さんの前を全速で逃げます。起伏の激しい場所を抜け、大地がだんだんと砂へと変化していきます。


初めての砂丘

 起伏の激しい斜面を登ったり、下ったりするうち、遠くにSSERのヘリコプターを発見。そこがチェックポイントです。そこは砂丘。黄色い大地。幾重にもデューンの山が見えます。なんだか、入ってしまったら出られないような、そんな思いすら抱きます。
 会長に言わせれば「こんなのまだまだ赤ちゃんの砂丘だよ。」と、笑っています。これが赤ちゃんの砂丘なら、パリダカの砂丘はいったい・・・。しかも、チェックポイントは難関の登り急斜面の手前。さすがSSERの山田さん、見せ場を作ります。

 チェックポイントでスタンプを押してもらい、いざ砂丘。
 登りの急斜面、会長の適切なアクセルワーク。難なくクリア・・・。難所を何事もなかったように通過してしまいました。あたかも、それが当たり前のような、ひとつの迷いもないアクセルワーク、ライン取りで全てが「適切」。後に山田さんから、会長のジムニーが一番きれいに登ったと賞賛されました。他の多くの選手はスタックしてしまったり、横から迂回したりしていたそうです。会長の技術と経験のすごさに圧倒されてしまいました。
 砂丘の中でも、車を止めることなく、また大きくコースを外すことなく、進んでいきます。ナビは砂丘のアップダウンの中で、一番高いところで次の山の様子、行き先、また砂丘の中でどの方向に進むのかなどを見なければなりません。砂丘の中で、目印となるバリーズという旗の発見も重要です。しかし、砂丘の中ではコマ図の距離や様子が合わなくなっていきます。外を良くみて、前走車の轍を追いかけるように走っていきました。
 砂丘を登ったり下ったりしている時は、すごく気持ちが良かったです。あっという間に砂丘の出口。パリダカの鉄人のすごさを目の当たりにした砂丘でした。

 しばらく走っていると、ミラーに気になるヘッドライトの光が写りました。尾上さん登場。すごいスピードで追いかけてきます。あっという間に追いつかれてしまい、まさにTail to Nose になってしまいました。
 こちらはなんとしてでも抑えたい状況。全開で逃げます。ナビもドライバーも必死で、ゴールまでの危険ポイントなど、コマ図で確認して、ドライバーへ伝えます。残りゴールまで10kmあまりを全開走行。
 1車身も離れずにゴール。なんとか、尾上さんのジムニーを抑えきることができました。
 ゴールしてから聞いたのですが、尾上さんは燃料がぎりぎりだったそうです。「ガス欠すればいいのに」などと冗談を言いながら笑う会長に、尾上さんは最後悔しそうでした。
 今日の軍配はこちらに。これで4分を挽回し、残り10分半の差です。まだまだ差が大きいですが、4分を挽回できて、うれしい夜でした。

 
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