■スリッパ「モンゴルへ行く」 ゴールの巻
ZOUMOD〜ARVEYHEER(8月13日)
朝はいつも冷え込みますが、この日は太陽が昇っても、気温は一向に上がりませんでした。オープンタイプのスリッパは、冷たい空気をもろに受けます。昼になると小雨までパラつき出し、私はジャンパーとカッパを重ね着して、首にはタオルを、足には作業シートを、もうなりふり構っている場合ではありませんでした。体の寒さが応えます。そして今回最も長くキツいイ1日に突入していきました。
途中でZ1(=カミオンバレー、ドライバー:菅原照仁氏)に会いました。他に会う選手もいない私には、貴重な話相手です。しばらく行くと川がありました。先日の雨のせいか、流れも急だし深そうです。スリッパの車高では水没だってあり得るのに、Z1は「これがオンコースだから行きなさい」と言います。行くのをためらっていると通りがかった地元の人が、もっといいところを知っている、と上流側のラインを教えてくれました。確かに先ほどの川幅よりは狭いのですが、渡ってみると思った以上に水流の抵抗を受け、足元から浸水してきた水で、バギーの中は一瞬にしてプールになってしまいました。タダでさえ寒い日に、足から腰までずぶ濡れになってしまった私は、ガタガタ震えが止まりませんでした。
それからの長いピストが続き、いつしかZ1とも離れ、右手の砂丘群も見送って、やがて暗闇の中でポイントとなる1本のラインを見逃してしまい、今宵も途方に暮れてしまいました。真っ暗な中でオンコースを見つける自信もなく、“この先で合流できるピストがあるかもしれない”とか、“遠くに見えるライトの明かりはZ1かもしれない”とか期待するのですが、ことごとく裏切られ、私はますますオンコースから外れていきました。こういう時に限ってGPSのバッテリーも時々切れてしまいます。モタモタしている場合ではなくなり、また今夜も闇のGPS走行を始めるのでした。
夜間走行は、深い森のトンネルをどこまでも潜っているような錯覚に陥ります。昼間の川渡りでずぶ濡れになった寒さが、今夜は気分まで寒々しくさせていました。
1時間ほどGPSで進んだ頃、遠くで光っていたライトがだんだん大きくなって近寄ってきました。今度こそ本当のZ1。良かったぁ、助かったぁ。Z1が神様に見えました。
しかしこの先はまだ180km。「飛ばさなきゃ、スタートに間に合わない」と思いながらも、ずっと満足に寝ていなかった私は、波のように次から次へと睡魔に襲われます。ライトに照らし出された草木の影は、猫や小人に見え出しました。危ないですね。幻覚です。そして朦朧とした時間が過ぎました。
アルベイヘールの町の手前で、Z1も危険を察し、少し休むことにしました。少しのつもりが、気がつくともう朝6時すぎです。スタートは5時と聞いていたので、あわててキャンプ地へ急ぎます。(寒い中、SSのゴールで待っていたオフィシャルの方々、本当にすみません)
遅かった理由:ミスコース、燃料フィルターのつまり、GPSのバッテリー切れ、寝不足
【走行時間:22h31m21s】
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