■ Facoat RALLY MONGOLIA 2012 参戦記 最終更新日:2012/12/06

 


ゾーモットに向けて軽快にとばす。

Etap4 ゾーモットの泉へ

 Etap4は、ゾーモットと呼ばれる小さな湧き水のあるビバークへの行程である。ライバルの尾上さんにリードして迎えたスタートラインだったが、リードはわずかなので精神的な余裕は全く無い。そんなときはミスが出る。

 スタート直後、室内にガタガタと騒音。前日に積んだガソリン携行缶の固定が不十分だったため、振動で緩み音を発している。ラリーの競技車両は一般に燃料タンクを増設し、長距離走行に耐えうるように改造されている。我々の車両の場合、増設した燃料タンクの給油口は屋根上に設置されている。これが少し問題で、このラリーではRCPと呼ばれる競技中の給油場所ではタンクローリーから給油を受けるのだが、給油の原理は単純に落差を利用したものであるため、タンクローリー内の油面より高い位置に給油口があると燃料が落ちてこないため給油できない。このため、タンクローリーから給油を受ける場合は一旦携行缶に燃料を入れてから、携行缶を屋根上に持ち上げて給油する方式を取っていた。この携行缶が、ガタガタと音を立てていたのである。

 競技中、ナビゲーターももちろんそうだが、ドライバーはその何倍も神経が過敏になる。ナビゲーターとしてはドライバーに気持ちよく運転してもらうために、言葉の一つ一つにも注意を払う必要があるにも関わらず、このガタガタ音は完全にドライバーの神経を刺激していた。 「何の音だ!」「すみません携行缶が緩んでいます!」「何やってるんだ!運転に集中できないだろ!やることの一つ一つが甘いんだ、自分のやった事が次にどうなるか想像して仕事をしろ!RCPで完全に直せよ!」、「はいすみません!」と車内では大声でこんなやり取りが展開されていた。
 RCPまでは細かなナビゲーションミスはあったものの、概ね順調にレースは進んでいた。尾上さんとはスタート時間に9分の差があったので、ここで9分待ってこなければ、ここまでは差を広げたことになる。そのため、毎日この数分の待ち時間がとても待ち遠しくとても緊張する。ここでは9分を過ぎても尾上さんは現れず、ここまでは差を広げたようで一安心。問題となっていた携行缶の固定も確実にやりなおし、準備は万端で再スタートを待機する。

 それにしても、鉄人のドライビングテクニックにはつくづく感心させられる。単純なことではあるが、加速、減速にメリハリがあり、車に衝撃が掛かりそうな箇所をすばやく見つけ的確に減速する。ラリーは競技時間が長いので、細かい積み重ねがタイムに影響するため、自分が細かいミスを繰り返したにも関わらず、ここまでライバルに差をつける。
 また、軽量化の効果も大きいようだ。同時にスタートを切ると数百メートルの間に車体ひとつ分のリードを生み出し、相手車両の前に出ることが出来る。一般的にモンゴルでは前走者がものすごい埃を巻き上げるため、後続車は視界が悪くなり不利になるので、この差も大きい。ダイエットした甲斐もあったと心の中で喜んだ。

 再スタート後は携行缶の固定も完璧で、音も無く快適に走行を続けていた。車内では二人とも少し安心したせいか、また世間話が始まった。会長「アメ頂戴」、車内では絶えず声を掛け合うため、また気候も乾燥しているため車内にはのどを潤すアメ数種類や飲み物を常備してある。自分「どのアメがいいですか?」、会長「○○さん(女性)の味のアメください」、高橋「…これでいいですか」と会長の大好きなニッキアメを渡す。会長「お!いいね〜」とこんなやり取りをしているのでまたミスを犯す…。

 後半の大きなミスは、涸れた沼地で訪れた。白く乾燥したとてもきれいな大きな沼の中を全開で飛ばしていたのだが、うっかりルートブックの指示を見逃してしまい、本来のルートを反れてしまった。ロスしたタイムを走りで取り返すのはとても難しい。ミスを取り返そうと無理な走りをすると、車にも負担がかかるし、乗員の神経もすり減る。しかし、何とかGPSの示す方角を頼りに元のコースに復帰し、ゴールまでもう少しのところまで近づいていた。後ろから尾上さんが来ませんように、と祈りながら慎重にゴールをめざし、明るい時間にゴールすることができた。 明るいので余裕を持って作業が出来るし、ゆっくり食事も取れる。 この日、ビバークでは多くの選手は次の日が休みということもあり、リラックスした雰囲気で前半戦の健闘をたたえあっていた。

 ゴール後9分待ってもライバルは現れず、この日も勝利を味わせて頂いた。車の調子がとても良いので、簡単に点検を済ませたが、室内への埃の侵入がものすごかったので、入念にエアブローするようにメカニックの二人にお願いした。

 

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